いないなぁ…頑張ってはいるんだけど
（千文字超の文が下に続く。覚悟がないなら読むなし）






































　「この人のことを好きになりたい・この人と好き同士になりたい」って思える人が現れたら、そのときは本気で頑張ろうとは思うけどね…。俺は、人のことを好きになるだけでも努力が必要なのよ。人が嫌い、ってことじゃなくて。
　その人を俺が好きになったら、その人とか周りに迷惑がかかるんじゃないかとか、もし運良くお付き合いできても、その先自分がうまく「その人の彼氏」をやっていけるイメージができない。今まで恋愛を一切してこなかったどころか、小学校中学年ごろまでは女子は敵だと思ってたもんだから、付き合い方とかわからないしなおさら不安だった。
　だから、そのうち俺は人を恋愛対象として好きになるのをやめた。好きになりそうになったら、必死に自分を抑え込んだ。好きになるだけで迷惑かもしれない、付き合えても絶対長続きしない。それがわかってたし、実際それを再認識させられるような出来事も、かなり前だけどあった。
　何より辛いのは、『自分が好きになった人のことを、自分の手で苦しめること』。それだけは、本当に嫌だった。ガッカリさせてしまったり、傷つけたりてしまったり。そうして大好きだった人が、俺のことを見て嫌な顔をする。自分のことを嫌う人を好くというのは、どう考えても道理が通ってない。どんなに好きな人でも、頑張って近づいた人でも、嫌いにならなくちゃいけない。そんな状況に、耐えられる気がしなかった。そうなる可能性が高いなら、絶対に恋愛なんてしない方が良い。誰かが俺のことを（間違って）好きになったりしない限り、誰かと付き合ったりなんてもってのほか。絶対に恋愛はしない。小学校高学年くらいから、そうやって生きてきて、色々経て、中学が終わる頃にはその生き方もしっかり身についた。
　俺はこう見えても失敗が大嫌いな完璧主義者だから、自信とか成功体験がない限り、行動に移したりできない。自分のことを好きになってくれるかわからない相手を好きになること自体リスキーだし、それが成功を収めたこともない。俗な言い方だけど、「叶わない恋なんて」って思ってしまう。
　今までの人生経験と、俺の性格。その他諸々の要因が、俺の中に「人を好きになっちゃいけない」的なものを作った。これはたぶん、自分では変えることも壊すこともできないと思う。鳥が飛び方を忘れないように、虐げられた動物がいつまでも人を怖がるように。半ば本能的に作って守り続けてきたこの規範を、俺自身の手で破壊するのは、あまりに難しい。それに、これを変えることは、今までの自分を全否定することだから。思い通りに行かないことが大嫌いなプライドの高い俺が、自分自身の人生を否定するなんてこと、できるはずもなかった。
　でも。時々思う。
『俺も普通の恋愛を普通にしたい』
『誰かを好きになって、その人と結ばれる、御伽噺みたいな恋愛をしたい』
　もちろん叶わないことくらい知っている。こんなこと考えたところで、自分じゃこの檻みたいに頑丈な固定観念からは逃れられないことも。今の生き方があながち間違いじゃないと思える俺がいる時点ですでにおおよそ詰んでいるだろう。
　それでも。
　この積もりに積もった恐怖を。今日まで俺が培ってきた経験の全てを、人生を。
「どうでもいい」の一言で片付けて、捻じ曲げて、ぶち壊しにして、そうして笑って、外に連れ出してくれるような人がいるなら。そばにいてくれるなら。

　俺が好きになるのは、たぶん、そんな人なんだと思う。